2017年12月31日日曜日

スウェーデンの老人ホームで働くということ/その3

こんにちは、mayukoです。

年末恒例、職場での今年の1年を振り返ります。
2015年の2月に就職してもうすぐ3年が経とうとしています。
わたしの職場は以前このKOKEMOMO Topicsにも書いたのですがスウェーデンの民間老人ホーム。わたしはそこの定員10名の認知症ユニットで働いています。
スウェーデンの老人ホームで働くということスウェーデンの老人ホームで働くということ/その2

まずこの記事そして以前の記事について、これはあくまでもわたしが勤める職場の話であるということ、日本でもそうですが素晴らしい老人ホームもあればよくない老人ホームもありまさにピンからキリまで。ひとつの老人ホームを取り上げて『日本の、スウェーデンの老人ホームはこうである』と言えないということを踏まえて読んでいただきたいと思います。
そしてわたしが勤めるのはスウェーデンでもかなり大手の民間老人ホーム。そして福祉の業界で働く人にそこの会社に勤めていると話すと「あぁ…。」と言われるようなところです(職員の待遇が良くないという意味で)。
夏には庭になる野いちごを食べまくる

わたしの今年の最大ニュースは『スウェーデンの老人ホームには国が定める人員配置基準がない』ということを知ったこと。
事の始まりは本社が人員配置を見直すと言いだしたことです。
現在の平日の介護職員は1ユニット(利用者10名)につき2人。そして朝から昼食後まで2ユニットの間を行き来しながらヘルプする職員が1人(いるはずだけど職員不足でほとんどいない)。土日はそのヘルプの職員がいない、というもの。
この現状でもかなり厳しいのにそれを平日は1ユニットにつき2人、土日は1ユニットにつき1名、そして2ユニット間を行き来する職員が1人、つまり2ユニット20名の利用者を3人の職員で介護する、というもの。
この話が職員会議で発表された時はみんな怒りを通り越して呆れて物が言えない状態でした。
その会議の中で出たのが「うちの施設は民間企業が建てて運営しているので会社が人員配置を好き勝手に決めて良い」というもの。耳を疑いました。「いやいやいや、わたしスウェーデン語聞き間違ったよね?」と思い会議後にスウェーデン人の同僚に聞き直したけど本当らしい。以前は基本的に自治体が老人ホームを運営していましたが近年、民間に運営を委託することが増えたのです。そのため建物自体は自治体が建てて民間企業が運営している老人ホームも多くそこは自治体が人員配置などに基準を設けることができるとのこと。
施設長も現場を分かっているのでどうにか会社側が考え直すように努力してくれました。ご家族への説明後、本社に働きかけたご家族もいると聞いています。そのお陰かこの話はひとまず保留という形に。

この話の後、たまたま自治体の職員の方と話をする機会があり、国の人員配置基準がないことについて聞いてみたのですが「基準を決めてしまうとその最低ラインしか職員を配置しない老人ホームが出てくるため」とのこと。「じゃあ最低ラインを十分なものにすればいいことでしょ!?」と思ったけど言いませんでした。
職員のペット、みんなのアイドル犬

わたしのユニットは2年以上利用者の入れ替わりがありません。嬉しいことなのですが入所期間が長くなると介護度も高くなり現在では2人介助を必要とする方が半数以上、職員の体力的にかなり厳しくなっています。幸運なことに職員の入れ替わりもほとんどなくみんなが仲良くご家族の方々も優しい方ばかりでユニット全体が家族のような雰囲気も。お父さんは同僚のアフリカ人男性。ある男性利用者が「パパって呼んで良い?」と彼のことをパパと呼び出して(本当のお父さんじゃないことは分かっている)ユニットの職員みんなが彼のことを「パパ」と呼ぶように、年下なのに。夏にはわたし、同僚、女性利用者2名のそれぞれのご主人の誕生日を一緒にお祝いしたりも。
庭の野いちごをあしらった同僚手作り誕生日ケーキ

大好きな利用者とお揃いのhappy Socks

以前にも書いたのですが夏休み、年末年始などの休暇シーズンになるとなぜか病欠が増えるうちの職場。みんなが休みたい時期にはかなり早めに休みの希望をとってシフトを調整します。同時にそのようなみんなが休みたくなる祝祭日にあえて働きたがる職員も。理由はOB-ersättning、OB-tilläggと言われる割増賃金。OBとはObekväm arbetstid(Unsocial working hours)、夜間、週末、祝祭日などみんなが働きたくない時間に働くと割増賃金が支払われます。これは職種などで違うのですが、わたしの職場では土日、普通の祝日には1時間につき50.80kr、復活祭、夏至祭、クリスマス、正月などの大きな祝日は1時間につき99.30krがプラスされます。例えば今年のクリスマスイブはわたしは8:00から21:00までの勤務(1時間休憩)だったので1191.60kr(約1万6千円)が通常の給料にプラスされます。
わたしは家族もなくクリスマスなんてすることもないので職場で利用者や同僚と祝った方が楽しいし、キリスト教徒ではない同僚にしてもスウェーデンの祝日に働いてお金を稼いで自分たちの祝日に休む方が良いと祝祭日に働きたがる職員は案外多いのです。
しかしこの割増賃金も公立の老人ホームはもっと良く、お隣の自治体の公立老人ホームでも働くパートの同僚はそこでは大きな祝日には時給の99%が割増賃金、彼女の時給は約135krなので1時間につき約133krがプラスされるとのこと。
この割増賃金もそうですが民間老人ホームと公立老人ホームの待遇には差があり、今年の初めに民間老人ホームと公立老人ホームの介護職員の給料格差をなくすため組合が働きかけ賃金アップが実現しました(それでもまだ低いけど)。
祝日は稼ぎどき!

未だにSNSなどで『スウェーデンには寝たきりがいない』という記事を見かけるのですが『寝たきり』の定義とは?全介助が必要な方もパジャマから洋服に着替えてベッドから起きて車椅子などで日中は過ごすこと?それなら日本の老人ホームでも普通です。一日中パジャマで、ベッドで過ごすなんていつの時代の老人ホームでしょうか?そして『スウェーデンでは胃ろうは行わない』。スウェーデンにも胃ろうはあります。全てが『遅れた日本の介護』『進んだ北欧の介護』の先入観を元に書かれているような気がします。それに日本からの視察を受け入れているような老人ホームはきっと良い所でしょうし、もちろん良いことしか話さないでしょう。
誰も「うちの職場は職員のほとんどが移民で中にはスウェーデン語もままならなくて、利用者が言ってることも理解できなくて、スウェーデンの文化なんて屁とも思ってない人もいるし、職員の数が少ないから個別の行き届いた介護もできないし、アクティビティの時間なんて取れません!」なんて言いませんよね…(追記:もちろん移民で素晴らしい介護職員もたくさんいますが、待遇があまりにも悪いためか職員の質を確保するどころではなくとりあえず人数を確保するといった感じ)。
もちろんスウェーデンの介護にも良いところはあります、同時にスウェーデンが日本から学べることも多いと思います。何でもかんでも「北欧はすごい、それに比べて日本は」などというのではなく、政策的なことは別として現実的にお互いの現場で取り入れられるようなことは取り入れていけるようになれば、と思います。そして日本にはスウェーデンの失敗からも学んでいただければ…。

最後に2018年の目標はズバリ『転職』。転職といってもやはり老人ホーム希望ですが。スウェーデンで給料アップを叶えるなら同じところでずっと働くより転職、そして金儲けしか考えてない現在の会社で働くのはもううんざり。大好きな利用者やそのご家族、同僚と離れることそして正社員という安定した立場(どこも人手不足なのに正社員は高くつくから雇いたがらない)を考えるとなかなか転職へ踏み切れないのですが…。



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KOMVUX-スウェーデンの学校(2014.12.30)
スウェーデンの老人ホームで働くということ(2015.12.29)






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